2024年 第50回衆議院議員選挙 総括

  • 0:はじめに
  • 1:衆議院議員選挙の総括
  • 2:日本維新の会についての分析
  • 3:大阪での選挙総括
  • 4:マニフェストについて
  • 5:広報施策について
  • 6:敗因分析、今後の課題と取り組み

0:はじめに

2024年10月27日に行われた第50回衆議院選挙では、馬場伸幸代表、吉村洋文共同代表のもと、164選挙区、165名(比例単独候補を含む)を擁立し、中期経営計画のとおり「野党第一党/与党の過半数割れ」を目標に掲げて戦った。総選挙を経て、与党の過半数割れという新しい政治構造が誕生したわけであるが、我が党は現有議席から6減、比例票は前回から約300万票減らすという非常に厳しい結果となった。

与党に対する政治不信が多くの有権者の投票行動を動かし、ほぼすべての野党が躍進する中で、我が党は議席を伸ばすことができなかった。これは、我が党が有権者からの期待や信頼を受けられなかったことの証左であり、この戦いを「敗戦」と結論づけ、総括を行いたい。

大変厳しい逆風の中で、各地で維新の旗を掲げて戦った候補者と陣営スタッフに感謝と敬意を表すとともに、日本維新の会と公認候補者をご支持いただいた皆様、共に戦ったくださった党員、支持者の皆様に心より感謝申し上げる。

選挙後、落選候補者125名の面談(意向調査)を実施したところ、85%以上の候補者が支部長の再任を希望してくれた。特に、大阪をはじめとする近畿圏に比べて、情勢的にも人的にもより厳しい環境の中で戦ってくれた他地域の候補者の多くが、日本維新の会の旗を掲げてもう一度戦いたいとの前向きな意向を示してくれたことに対し、重ねて深く感謝と敬意を表したい。

この敗戦を糧とし、今後の日本維新の会を再生させるためには、より解像度の高い総括を行う必要がある。そこで、本総括レポートは、各都道府県支部、政調会、広報局、候補者や事務職員からのヒアリング、調査会社からの分析レポート、データアナリストによる統計分析、外部有識者の意見などを統合し、最終的には選対本部が取りまとめて提出するものとする。

なお、「6:敗因分析と今後の課題と取り組み」については、客観的な視点が必要なため、大阪維新の会刷新PTのサポート業務を実施しているベースストラテジー株式会社に取りまとめを依頼して作成した。

1:衆議院議員選挙の総括

第50回衆議院議員選挙の結果、日本の政治情勢に大きな変化が生じた。主な特徴は以下の通り。

  • 与党の過半数割れ:自民党と公明党による与党連立は合計215議席にとどまり、衆議院の過半数(233議席)を割り込む。これは今世紀に入って2度目の出来事。
    • 自民党: 191議席 (選挙前から56議席減)
    • 公明党: 24議席 (選挙前から8議席減)
  • 野党の躍進:立憲民主党を中心とする野党が議席を大幅に増やす。
    • 立憲民主党: 148議席 (選挙前から50議席増)
    • 国民民主党: 28議席 (選挙前から21議席増)
  • 地域別の特徴
    • 自民党は大都市部で苦戦。特に首都圏や関西圏の小選挙区で議席を減らす。
    • 立憲民主党は全国的に伸長し、11都道県で第1党となった。
    • 日本維新の会は大阪では強さを見せたが、全国的な拡大には至らず。
      • 獲得議席数:38議席(選挙前から6議席減)
      • 候補者数:164の小選挙区で候補者を擁立
      • 大阪府内:19選挙区全てで勝利(初の完全制覇) 
      • 関西圏での公明党との直接対決:大阪の4つの選挙区で勝利、兵庫では惜敗
      • 大阪以外での小選挙区の勝利:京都2区、滋賀1区、広島4区、福岡11区
  • 有権者が投票行動を決めるうえで重視したのは主に「政治とカネ」「経済政策・物価高対策」の2点であったと考えられる。
  • 小選挙区では、「政治とカネ」に起因する政権与党への批判票が主に立憲に集中する、いわゆる「戦略的投票」が生じた結果、小選挙区における立憲の大幅な躍進に繋がった。一方、立憲が候補を擁立していない選挙区では、次に勢力の大きい野党の候補者に政権批判票が集中する傾向が見られた(例:福岡11区、埼玉14区等)
  • 比例代表では、主に若年層・現役世代に「ネット地盤」を通じて訴求できた政党が躍進。具体的には、20〜40代の中・高所得層には国⺠⺠主党が、20〜50代の低所得層にはれいわ新選組が、それぞれYouTube等のSNSを通じて効率的に訴求し、議席を伸ばした。
  • とりわけ国⺠⺠主党が獲得した支持層は、自⺠党が2012年の安倍政権発足以来確保してきた若年層・現役世代の支持層や、無党派層の中でも安倍政権を肯定的に評価する層と重なる。
  • 与党は、岸田政権下で若年層・現役世代の支持を減衰させていたが、給付金や地方重視など高齢層をより一層意識した政策・メッセージを持つ石破政権の発足で、更にその世代の支持を喪失した。その間隙が国⺠⺠主党をはじめとする野党の伸⻑を許し、小選挙区・比例代表とも得票が減少した。

この変化は数年がかりの構造的なものであり、短期的に回復する可能性は低い。従って、安倍政権以来の「一強多弱」構造は終焉したと見られる。


2:日本維新の会についての分析

  • 有権者からの評価は全体的に低調で、比例区で自民に次ぐ二番手の得票率を誇った前回の勢いは失われた。
    • 全国的に支持は低調で、ほとんどの比例ブロックで得票率は五番手以下に沈んでいる。地盤の近畿においても前回ほどの差を付けられていない。
  • 無党派層の取り込みに失敗しているほか、前回選挙の投票者をキープできていない。さらに、地盤である近畿ブロックの中でも大阪府とそれ以外の府県で支持の強度に大きな違いが見られる。大阪府内では「大阪の利益代表」としての支持理由があるが、府外では相応の支持理由がない。
    • 近畿ブロックの維新支持者の間に「改革能力・意識の不足」や「橋下・松井期からの失速」を指摘する意見が見られていることは注目に値する。
  • この状況下で、他の国政政党党首と比べて馬場代表の好感度・知名度が低い。
    • 一方で、吉村大阪府知事の人気・知名度は極めて高い。
    • ただし、政党としての拒否度は各党の中でも低いため、失敗・批判などで「拒否されている」のではなく、単に「選ばれていない」ことが分かる。
  • 衆院選に向けた広報・キャンペーンがうまくいったかについては疑問が残る。
    • 調査結果を見る限り、支持者の態度は安保・憲法・経済では一貫性はない。社会保障・福祉では左寄りを政策に重視する意見からも、安保・憲法等を除けば、平均的有権者の態度と大きな違いはない。支持者の特徴は自民・国民民主に似ているが、よりそれぞれの色(自民=文化的もうちょっと右、国民民主=経済が左)を薄めたようなイメージとなる。
    • しばしば、政党が具体的な政策を打ち出した時には、支持者はそれに釣られて動く(あるいは納得できない人は離脱する)。今回の調査結果から、日本維新の会が政策的な売りを出せなかったこと、または、高齢者への負担増を政策的な売りとして打ち出したことで拒否感を抱いた有権者いたことなど、深堀分析が必要との課題が残る。
    • また、支持者には比較的高年齢が多く、若年層は非常に少ない。「既存政治の打破」というメッセージが届いたのかは不明瞭。
  • そもそも「改革志向の政党」であるはずの維新が自らの支持者から「改革意志と能力の不足」を指摘されている点は示唆的。根本的には、維新は誰のために何をする(改革する)政党なのかを明確に唱えて、有権者に説得的に発信していくことが求められる。
    • 政策的な軸、あるいは訴求するターゲットを見つける必要がある。今回の衆院選では若年層を国民民主党が、高齢者を立憲民主党が、右派系市民の有権者は保守党などがそれぞれある程度確保した。自民党は相対的に若年層・現役世代の支持を安定して集める一方で、維新は誰のための政党となるのか。次の選挙でも同様の傾向が現出する可能性は高く、維新として「大阪」「近畿」、もしくは「全国」いずれかの単位で支持理由、支持基盤の再構築が求められる。
  • 候補者の擁立について
    • 「候補者を数多く擁立することは、比例票の掘り起こしに繋がるか?」という問いに対し、統計的な分析を行なった。
    • 手法と視点:数回の衆議院選挙における、全国の比例票と候補者数の関係性を分析。加えて、関東圏の都道府県における候補者を擁立した選挙区とそれ以外で得票に有意差があるかを分析した。
    • 結論①
      • 候補者擁立と比例票の積み増しには、政党に関係なく正の関係性がある。つまり候補者を擁立すれば比例票も伸びる傾向があると結論づけられる。
      • 有権者の風を受け止めると、基礎的な得票率(候補者ゼロ都道府県の得票率)が上がり、小選挙区候補者が多数であるほど得票率も伸びる(近似直線の傾きが急になる)。
      • 国民民主は風を受け基礎的得票数(9%前後)を上げ、傾きも急であった一方で、維新の会は逆風で基礎的な得票率が低く(4%前後)、多数の候補者を擁立した都道府県においても得票率が他党に比して伸びなかった。つまり、全体の風を掴みきれなかったことで、結果として候補者擁立のパフォーマンスが低くなった。
      • 近畿を除く都道府県においてそれが顕著で、候補者擁立が比例得票の押し上げにつながりにくかった。
      • 今回は結果論として候補者擁立のパフォーマンスが良くなかった(原因は処々有る)が、小選挙区候補者擁立は意味が無かったわけではなく、逆風下の結果としてパフォーマンスが低かった。仮に候補者擁立していないと、追い風を受けた際に候補者がいなかったら拾いきれない票が出てくるというロスが生じる。
    • 結論②

深堀分析:候補者を擁立した選挙区は、それ以外の選挙区よりも比例票の獲得率が高くなるかということを分析するため、近畿圏以外の主要6地域(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、福岡)に着目し、小選挙区ごとの比例票得票率と小選挙区得票率を分析した。

  1. 各都道府県小選挙区内の得票率分析をすると、小選挙区候補者を立てた選挙区は立てていない小選挙区に比べて比例得票率が高い。ただし、今回の場合はその差は統計的に2~3ポイント差にとどまるが、ブロックの比例議席を1枠増やすまたは減らすことに影響する可能性は十分にある。
    1. 東京は選挙区ごとの比例得票率のばらつきが大きいが、候補者を立てた選挙区のほうが統計的には比例得票率は高いことは認められる。
    1. 候補者を無意味に擁立すれば良いというものではなく、”良い候補者”(今回は小選挙区得票率20%以上の候補者、維新支持層以外からも得票しているような候補者をこのように定義)は、それ以外の候補者の小選挙区に比べて比例得票率が統計的に高い傾向がある。(”良い候補者”は有権者に対して比例票も維新に入れようという動機付けに成功している、案山子的役割は小選挙区得票率≒その選挙区の比例票得票率となりパフォーマンスは高くない)
    1. 今後はこうした”良い候補者”の普段の政治活動(活動量、地元に根付いた政策論、広報活動 etc.)を分析して、どのような活動が支持率を高くする変数となっているのか明らかにすることが重要。


3:大阪での選挙総括 

大阪維新の会選対本部により、19選挙区の個別状況分析、地方議員へのヒアリングを実施し、レポートを作成した。

〜大阪維新の会選対本部選挙総括より転記〜

  • 第50回衆議院議員総選挙(令和6年10月15日告示、同27日投開票)において、大阪府内では全19選挙区に公認候補者を擁立し、全ての候補者が小選挙区で勝利する結果を得ることとなり、大阪での地力を示すことが出来ました。
  • 一方で、大阪府内の日本維新の会の比例票は115万票であり、前回の総選挙(令和3年)の171万票から、56万票減少しており、府民の方々の期待を十分に受け止められていない状況です。この結果は、様々な外的要因も考えられるところですが、最大の要因は各候補者のこの間の活動に大きく依存するものと推察されます。実際、府内の各選挙区においても、風の影響を受けることなく、地方議員とも厚い信頼関係を築き、盤石の選挙戦を戦われている候補者(陣営)がある一方で、平時の地元活動が不足していると指摘されていたり、地元の地方議員との関係が希薄で信頼関係に乏しい候補者がいたのも実態であり、こうした候補者(陣営)はこれまでの大阪維新の実績と地方議員の献身的な支えにより勝利を収めたといっても過言ではありません。大阪維新の会は、国会議員も地方議員も横並びであることを再度認識する必要があります。
  • 次の総選挙に向け、各候補者及び事務所のあり方を抜本的に見直し、代表や幹事長が応援に入ることなく、風に頼ることもなく、候補者本人の人格と政策で勝利を収められるように、今この瞬間から活動を精査、実行されることを求めます。つきましては、大阪選対の選挙総括ヒアリングを踏まえ、今後の検討・改善事項を下記の通り取りまとめましたので、選挙総括として報告致します。

【今後の検討・改善事項】

  • 候補者の質及び平時からの活動について
    • 言動や行動を含めた候補者の質を、平時から高められたい。今回の選挙戦においても、盤石の選挙戦を展開された陣営と厳しい戦いを強いられた陣営の違いは、この点に集約されている。
  • 候補者事務所の選挙体制について
    • 選挙ルールや選挙準備を含め、秘書や事務所スタッフの育成を強化し、事務所の体制を平時から充実されたい。
  • 選挙活動に必要な人材・資材の準備について
    • 選挙活動において認められている人材(運転手・うぐいす等)や資材(各種看板や推薦ハガキ等)について、各陣営において準備されたい。
  • 有権者に分かりやすい政策の発信について
    • 政策(公約)について、有権者に分かりやすく、文字が少なく平易な表現に努められたい。また、報告会や議会報告ビラにおいて、地域課題の解決策等を積極的に発信して頂きたい。併せて、掲載内容についても、地方議員や有権者の声を可能な限り聞き取って頂きたい。
  • 地元地方議員との関係について
    • 地元活動(駅立ち、報告会、街頭演説等)や地元行事等において、地元地方議員と平時から連携を取り、急な選挙戦にも的確に対応できる関係を構築されたい。同時に、地方議員は駒ではないとの認識を十分に持って頂きたい。
  • SNS発信の強化について
    • 今回の選挙では、本部広報による動画作成支援等によりSNS発信が強化されたところであるが、各候補者がSNS発信を平時から充実される方策を検討されたい。
  • 各種選挙ルールの事前周知について
    • 今回の選挙では、衆議院議員選挙特有のルール(比例標旗等)や政策パンフレットの取り扱い等について、選挙区連携会議等を通じて所属議員への周知を図ってきたところであるが、十分に情報が伝わっていなかった陣営もあったことから、平時からの公選法等勉強会の充実と各種選挙直前の情報共有を強化されたい。
  • 選挙区における活動費の共有について
    • 平時から選挙区内の地方議員と活動内容等を共有し、広報等必要な活動費は共有されたい。
  • 参議院議員(支部長)等の選挙応援のあり方について
    • 参議院議員(支部長)等の選挙応援は有難いところであるが、各議員の都合でなく、各候補者の予定に合わせて応援に入られたい。また短時間の応援は控えて頂きたい。併せて、地方議員は地元選挙区の応援に専念し、他選挙区への個人的な応援活動は控えるように周知徹底して頂きたい。
  • 比例重複のあり方について
    • 今回大阪府内では、多くの候補者が「比例重複無し」で覚悟をもって選挙を戦ったところであるが、一方で府内の比例票は大きく減少しており、今後の比例重複のあり方について多面的に検討されたい。

上記に加えて、総括としてのまとめ

  • 選挙2ヶ月前までは情勢調査で全ての選挙区がリードしていたが、選挙序盤から中盤にかけて、各社情勢調査の統合分析によって、複数の選挙区において苦戦(リードされる、または僅差)が明らかになった。
  • 当初、吉村共同代表の遊説は、大阪府内では公明区(3区、5区、6区、16区)のみとし、大阪以外の近畿圏を中心にスケジュールを組む方針だったが、10月21日選対会議以降の後半戦、吉村共同代表は大阪の重点地域への遊説を強化し、大阪府外へは出ないことに方針を転換。
  • 選挙中に重点地域となった選挙区:6区、7区、10区、13区、14区、16区、19区。
  • この方針転換は大阪全勝の結果につながった。一方で、後半戦は、兵庫、京都、和歌山、滋賀、奈良への遊説のスケジュールを確保できなかったのは今後の課題といえる。
  • 大阪での継続的な支持拡大に加え、党の人的・経済的リソースを大阪以外へ有効活用するためには、大阪選対のレポートの通り、「候補者の質及び平時からの活動」が最も重要な要素となり、この点は大阪府内の選挙区でも個別に差がある。
  • 大阪選対の提言による改善事項は、これまでも指摘されてきたことも多く含まれており、それらが指摘されながらなぜ実現しないのかを含め、深掘り分析と次なるアクションが必要。
  • 「比例重複無し」が府内の比例票の取りこぼしに繋がったのではないかという仮説には一定の合理性があるが、一方で、公明党候補も「比例重複無し」で覚悟をもって恐ろしいまでの活動量で選挙戦を展開していたことを踏まえると、逆風下においても全ての小選挙区で接戦に勝ち切った押し上げ効果もあると指摘する有識者もあり、今後の検証課題として残る。


4:マニフェストについて

​​日本維新の会政調会にてマニフェストの総括を行なった。

  • マニフェストの内容について
    • 元日から災害があったが、維新のマニフェスト主要項目に防災のワードがなかったためネガティブに報道された。
    • 「改革」というワードを多用しすぎて具体的な内容が伝わらない。「規制改革」とは何の規制をどうするのかイメージが沸かない。
    • 首相公選制などワクワクする大きな国家ビジョンも柱政策として必要である可能性がある。
    • 外交政策や安全保障などで弱いというイメージは払拭できていない(具体的な安心感を住民がイメージできる内容にはなっていない)
    • 「身を切る改革」は「貧すれば鈍する」のイメージになっている。報酬ではなく議員定数削減、特権的なものの削減など、政治家の個人の懐の話よりも政治全体の効率化などに話を格上げするフェーズに入ったと考える。
    • 統治機構改革は前面に押し出て、地域ごとに訴えられる余白があれば良い。
  • マニフェスト調整のプロセスについて
    • プロセスにもっと多くの議員の目が入った方が良い。政策の決定プロセスの透明化が必要。意見集約した後の返答が不十分であった。
    • 全体スケジュールが分かりにくく、どのタイミングで概要版、詳細版、キャッチフレーズなどが落ちてくるのか知れたら個人の広報もやりやすい。
    • 選挙直前にマニフェストをまとめるのではなく、平素からまとめておくことによって時間的な制約を緩めて丁寧な作業ができる。最終的な打ち出し方を広報とすり合わせながら政策を調整していく。
  • マニフェストの打ち出しについて
    • 平易な表現が重要「可処分所得→手取り」など、国民民主はうまかった。維新はわかりにくく難しい。「チクチク言葉」「檄文」が多く、苛烈な感じがある。
    • 高齢者3割負担は特に槍玉にあげられた。「年齢に関わらず所得に応じた負担を求めていく」など、同じ内容でも表現は工夫できた。「改革者として国民に耳の痛いことを打ち出す」という姿勢を強調しすぎた可能性がある。
    • 主語が政治家側になっており、国民にとってどうかで語れる広報が必要。
    • 生活者にストンと落ちるメッセージを。
    • 高齢者の有権者数が圧倒的なのでそこを意識した賢い広報をすべき。
    • 教育の無償化は財源論とそれで何をしたいか(国民生活がどう変わるか)など説明が長くなる。上段に据えるべき(国民生活への)コンセプトが必要。
    • 維新の広報物は文字が多い。写真や端的なフレーズで短く広報する
  • その他
    • 活動量が多い方と少ない方で票数の差があまりなく、この辺りの検証は必要。
    • 政策パンフレットはA4ではなくB5サイズの方がバッグにそのまま入る。
    • 政策パンフレットは使い勝手が良く、ポスティングもできるため重要なツール。政党活動の重要な武器だと意識し、写真を入れたり、サイズを小さくしたり、有権者からみて自分に必要な情報が取りやすいようにブラッシュアップが必要。(そのためにここに注力する意識が必要)
    • 支部長や地方議員への事前のマニフェスト訴え方勉強会などが必要


5:広報施策について

  • マスメディア、WEBメディア共に、現時点までに得られている情報では各党比較してもリーチ量はTOPとなったが、投票への効果が薄かった。比例の得票数は「立憲民主党」「国民民主党」に奪われることとなり、マス広告中心の訴求のみでは、選挙前から存在している逆風に対し、切り返すことが出来なかったと考える。
  • 「国民民主党」中心に「WEB・SNS広告」を基調とした広告展開にシフトし、政策を具体で語るクリエイティブを用い、これもイメージ中心の維新広告戦略との差別化という結果となった。
  • YouTube動画の分析
    • 維新のYouTube動画は、広告掲出を含めて、視聴率、視聴完了率、視聴単価のすべてにおいて成果が良かった。
    • しかし、自民・立憲・維新は1つのメッセージ(クリエイティブ)を大量に見せる、テレビCM的発想から抜けられていない。しかし、万民受けするクリエイティブなどなく、再生数に対し高評価数が少ない。

一方で、躍進した国民民主党はターゲティングとクリエイティブを一致させ、高評価の数が段違いに多い。

  • 有権者に対し、様々なメディア・制作物を展開した一方で、メッセージが統一できず、各候補者からの発信もバラバラとなり、日本維新の会を選ぶ、確固たる理由をつくることができなかった。
  • 広報的観点から見ると、「超早期解散」により自民党を含めた各党の選挙準備がなされていなかったことはチャンスとなるはずだった。これにより早期解散に対して立ち向かう維新、という構図を形成する想定とは異なり、TV展開や新聞展開が一人浮いてしまう形となった。
  • 例えば現役世代への投資が目的の訴えであっても、維新は「高齢者世代に原則医療費3割負担」が注目され批判を浴びていたが、一方で国民民主の「手取りを上げる」は本質的には維新と近い内容ではあるものの、こちらは評価されている。
  • 以前の選挙戦略では、国民が明確な不満を持たない中でいかにして争点を作るか、現政治の停滞している部分を描くかが重視されていたが、今回は国民に明確な不満があり、(=政治とカネ)そういった不満をいかに国民の感覚に合う言葉・表現でアウトプットできたかが、国民民主党との差につながった一つの要因と考える。

<改善点>

  • メディアについて

今回の選挙を通じ、各党「SNSを活用しなければ票が集まらない」ことが分かり、以降の選挙の比重はよりSNSへと高まっていくことが想定される。以降はメディア別に立ち位置をより明確にする。特に、考査が厳しいテレビに対して拘る時代が終わった、ということが政治領域についても傾向として見られたことは大きな時代の変化だと考える。

  • テレビCM:『イメージ訴求』と割り切り、端的にわかりやすい言葉を残すためのもの。効果があると見込まれる地方部の比重を増やし、テレビ視聴の少ない都市部は下げる。
    • WEB・SNS広告:選挙運動には当たらない範囲で、政策別に分かりやすく内容を伝える『政策訴求』と捉える。いわゆるCMの形式にはこだわらず、対談や説明コンテンツ等、通常のYouTubeコンテンツも広告として回し、従来の「CM」の概念では考えない。
    • 新聞・ツール類:高齢者世代、地方部にはまだ有効と考えられる。こちらもイメージ訴求よりは『政策訴求』にシフトしていくべき。
  • メッセージについて
    • 維新がどういった集団で、何を為そうとしているのか。大阪以外の人間は「知らない」「分からない」のが現状。ネガティブ感情ですらないことを理解することが重要。
    • 議員や候補者ですら訴えがバラバラであり、結果、全国一丸となった闘いができなかったのではないか。政策や組織実態を多面化していくことは必要だが、広報視点ではあえて「メッセージは絞り」「国民目線」で伝えるべき。
    • SNSは、テレビCM的発想を脱し、ターゲティングとクリエイティブを戦略的に一致させ、より効果の高い手段へと転換すべき。
  • 政調会と広報の連携
    • 企業であれば、商品を宣伝するとき開発段階から広報宣伝と密接に連携するが。維新の商品とも言える「政策」や「取組み」は、「全て作り終わった」うえで「広報に渡す」状態となっており、これにより、
      • 広報視点では広報施策準備に時間をかけられず、
      • 政調視点ではせっかく中身を充実させても伝えてもらえない、

という政調-広報間に理解の溝が生まれている。広報と政策(取組み)を両輪で進める体制づくりが、選挙期間の前から必要だと考える。

6:敗因分析、今後の課題と取り組み

※本項は、これまでの取りまとめや複数の調査資料を基に、大阪維新の会刷新PTのサポート業務を実施しているベースストラテジー株式会社によって取りまとめを実施。

<敗因分析:短期的課題>

  • 大阪における改革ポジション・改革訴求の限界
    • 大阪維新の会「刷新PT」の取りまとめを参照。
  • 政治スキャンダル/組織内の不祥事対応
    • 兵庫県知事問題への対応の遅れが批判を招き、ネガティブな露出が増えた。
    • その他にも不祥事/スキャンダルの露出機会が多かった。万博も完全にネガティブではないがその文脈が多く見られた
  • 広報メディア戦略のアップデートの遅れ
    • SNS戦略については、ターゲティングとクリエイティブを一致させて効果を最大化させた国民民主党に劣後した。
    • SNSの影響力が増していき、SNSにいるかいないかが自民党的かそうではないかという見え方になっていった。サブメディア/SNSでどう露出していくか、誰が出ていくかということが票獲得に大きな影響が出てきてしまう。
  1. 政治とカネの問題への対応
    • 政治資金規正法改正を巡り、政策活動費について自民党との議論があったが、ポジティブな評判形成に至らなかった。また維新内部としてどうするかということも不完全に見えた。

<敗因分析:中長期的課題>

  1. 主要政策の行き詰まりと政治的立ち位置の不明確さ
    • 看板政策だった「大阪都構想」が2度の住民投票で否決され、新たな目玉政策の不在の状態。
    • 今年3月の党大会で「自民党に代わる政権政党を目指す」宣言するが、明確な戦略を示せず。結果として、国民民主との立ち位置が重なり、そのポジションを取られてしまっている。
  2. 大阪一日本の構造的問題/限界
    • 大阪維新の会を母体とする地域政党的性格が、全国政党への転換を妨げる要因になっている可能性が高い。これまでは短期的解決で対応を検討していたが、長期的視点/根本から検討しなければいけないと考える。

​​

今後の取り組みについては、下記が検討される。

  1. 政策の見直しと明確化による他党との差別化
    • 「改革」を掲げるだけでなく、具体的で実現可能な政策の提示。経済政策や社会保障政策もあるが、より国民生活に直結すると理解やすい政策の提示。
    • 自民党や立憲民主党との明確な違いの提示。
      1. 独自の政治理念や価値観の確立と発信。
  2. 長期ビジョンの提示
    • 日本の将来像に対して短期的な批判だけでなく、長期的な国家戦略の提案。
  3. 人材育成と登用
    • 若手や女性など多様な人材の育成と積極的な登用。
    • 地方から国政へのキャリアパスの確立。
  4. 全国的な組織基盤の強化
    • 大阪以外の地域での党組織と支持基盤の拡充。
    • 地方議員の育成と増加による草の根からの支持拡大。
    • 若年層や無党派層への積極的なアプローチ、都市部だけでなく、地方での支持獲得。
  5. 広報メディア戦略の再構築
    • SNSなどを活用した効果的な情報発信、党のイメージ改善のための戦略的な広報活動の再構築が必須。
  6. 党内ガバナンスの強化 
    • 不祥事への迅速かつ適切な対応。
    • 透明性の高い党運営と意思決定プロセスの改善。

日本維新の会 幹事長 藤田文武

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